さりげなく落ちていた物は


最高に俺を楽しませてくれた




まさに、落とし物様様だ
















      A lost article  オトシモノ




















暇つぶしにブラブラしていると、床に面白いものを発見。

身を屈めて拾い上げてみると、そこには何やら誰かの携帯ストラップ。




「あれ。これどっかで見たことがあるような・・・・。」




どこで見たことがあるんだろう。

どこかで売ってた?

・・・・いや。違うな。






少し考えているうちに、ピーンときた。

「あ。司だ。」

やっぱり俺って冴えてる。











それは数日前の出来事。








やけにご機嫌な司から、これ見よがしとばかりに目の前に見せられた物があった。




「なーなー、類。これ何だと思うか?」

そう言って司は、それを俺の目の前でゆらゆらと揺れさせた。



「何ってストラップ。」

どうみても、携帯のストラップ以外には見えないだろうに。




「わかってねぇなぁ、お前は。」

首を軽く横に振り、はぁ。と分かりやすくため息をつかれた。



「これはなぁ、牧野と一緒に買ったストラップなんだぜ?」


「へー、そう。よかったね。」

どおりで、こんなに機嫌がいい訳だ。



「だろだろ?いやぁ、あいつがどうしても一緒に買いたいって言うからよー!!」

・・・・・・

・・・・

・・














そんな過去のことを頭の中で思い起こしながら、もう一度落とし物を見つめる。



あーあ、牧野。

あんなに司喜んでたのに、落としちゃ駄目でしょ。



・・・なーんて、心にも思っていないことを言ってみる。



こんなに美味しい餌は無いよな。

さーて、どうしようか。










すると前から絶妙のタイミングで、お目当ての獲物が歩いてきた。

でかい奴とお節介でオモシロイ女の二人。




暇つぶしに丁度いい。

俺はストラップをポケットの中に滑らせた。



別に知らんぷりして、見逃してやってもいいんだけど。

でも、やっぱそれじゃツマラナイでしょ?






「牧野。司」

前から歩いてくる、お二人さんに声をかける。

「あ、花沢類。」

牧野は、黒い髪を揺らしながら俺の方へと走ってきた。




少し置いて行かれたのが悔しかったのだろう。

牧野と一緒にいた司から睨みが飛んできたような気がしたが、まぁ気にしない。





「ねぇ、牧野。突然だけど、何か大事なもの失くしてない?」

「え?大事なもの?」



なんだろう、と牧野はポケットの中を探ったり、鞄の中を探してみたりした。

それでもやっぱり何が無いのか分からなかったらしい。


「えー?私、何か失くしてる??」

「ああ。よく探してみなよ。」







「あっ!!!」

もう一度、身の回りを探し始めた彼女が大きな声をあげた。


その例の『大事なもの』にようやく気付いたのだろう。

携帯を取り出すなり、青くなった。




「携帯のストラップが無い!!」

そうそう。それだ。

「はぁ!?ストラップが無いだぁ!?」


俺に睨みをきかせていた司も、牧野の言葉で睨むどころでなくなったらしい。



「無いってどういうことだよ!?」

「わ、わかんない。落としちゃったのかな・・・?」


「ご名答。」

「「は?」」




俺は、ポケットから二人の捜し物を取り出し、二人の目の前に見せつけてやった。




「俺が運良く拾ったんだ。感謝してよね。」

「花沢類〜、ありがとう!!・・・・・って、え??」

牧野がストラップを取ろうとした瞬間、手を引っ込めた。



「ちょっとー!!なんでくれないのよ!?」

「まぁ、少しくらいのご褒美はいいよね。」

「え?」

クスリと笑った俺を、ぽかーんと見ていた牧野が一言、言ったのと同時に。



ほんの少しばかりキスをしてやった。

しかも、司の目の前で。






素速く牧野の手にストラップを握らすと、俺は二人に背を向け走り出した。



さぁ、逃げろ。

獲物が追ってくる。







05/8/2


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今回は、落とし物のお話。


その後の類くんは、きっと司からパンチをくらった事でしょう(笑)


ちなみに管理人の携帯ストラップは、アクビちゃんとドラミちゃんがついてます。

類くんの携帯は、シンプルにストラップとか何もついてなさそう。